AIの打ち合わせで「ここはプロンプトを工夫すれば対応できます」と言われて、なんとなく頷いてみたものの、結局なにを工夫しているのかよくわからない——そんな声をよく聞きます。
同じAIでも、渡す指示文しだいで返ってくる答えがずいぶん変わります。発注検討の早い段階で出てくる言葉なので、いったん整理してみます。
ひとことで言うと
プロンプトとは、AIに「何を、どんな前提で、どんな形でやってほしいか」を伝える指示文のことです。日本語では「指示文」「お願い文」と呼ばれることもあります。
ChatGPT のような対話型サービスに打ち込む質問文も、業務システムの裏でAIに送られている命令文も、どちらもプロンプトです。ユーザーの目に見える形のときも、システム内部で組み立てられている見えない形のときもあります。
たとえ話で説明
料理を頼む場面を想像してみてください。
「なんかいい感じの夕飯作って」とお願いした場合と、「冷蔵庫の鶏もも肉とキャベツで、子どもも食べられる甘めの味付けの主菜を1品お願い」とお願いした場合では、出てくる料理がだいぶ違いますよね。後者のような指示文がプロンプトのイメージです。
同じ料理人(=AI)に頼んでも、材料・好み・制約・仕上がりイメージを渡してあるかどうかで結果が変わります。プロンプトの工夫とは、つまり「お願いの仕方を整える作業」です。
入ったばかりの新人さんに仕事を頼む場面と言い換えてもよいでしょう。「お客さま向けの返信を、ですます調で、3行以内でまとめてください。例文はこちらです」というふうに、前提と例を添えて頼むと、初回からそれなりの返事が返ってきます。これも要はプロンプトの考え方と同じです。
※厳密にはプロンプトには「役割の設定」「過去のやりとり」「外部から取ってきた資料」など、いろいろな要素が混ざります。ここでは「AIに渡す全部の指示」とゆるく捉えて構いません。
ビジネスで何が変わるか
プロンプトを「指示文の設計」として捉え直すと、AIまわりの発注検討で次のような判断がしやすくなります。
- 同じAIでも書き方で結果が変わる。「期待した答えが返ってこない」という相談の多くは、プロンプトを整えるだけで改善することがあると言われています。いきなり高価な追加学習に走る前に、まず指示文の見直し余地を確認するのが定石です
- プロンプトは資産になる。「うちの問い合わせ対応で、こう書くと安定する」というプロンプトは、社内マニュアルと同じく蓄積していく性質のものです。発注先と組む場合は、誰が管理・改善していくのかを最初に握っておくと、後で揉めにくくなります
- 「プロンプトの工夫」と「ファインチューニング」「RAG」は別の打ち手。指示文を整えるだけで足りる課題もあれば、自社資料を参照させる仕組みや追加学習が必要な課題もあります。最初から大きな仕組みを組まず、まずプロンプトで届く範囲を見極めるのがコストを抑えるコツです
- ハルシネーション(AIがそれっぽい嘘をつく現象)対策にもなる。「わからない場合は『わかりません』と答えてください」「資料に書かれていないことは書かないでください」といった一言を入れるだけで、過剰な作文をある程度抑えられるケースがあります
発注先と話すときは「プロンプトを工夫します」だけで止まらず、「どこにどんな指示を、誰が、どう改善し続けるのか」まで一段降りて聞けると、要件のズレが減ります。
関連用語
- ファインチューニング:自社データで追加学習させてAIを寄せる方法。プロンプトの工夫だけで届かないときに検討する次の選択肢
- RAG(検索拡張生成):自社の資料を都度プロンプトに混ぜて答えさせる仕組み。プロンプトの内容を動的に組み立てる代表的なアプローチ
- ハルシネーション:AIがそれっぽい嘘をつく現象。プロンプトの書き方で一定の抑制ができるが、ゼロにはできないので人による確認とセットで考える