AIまわりの記事を読んでいて「RAG(ラグ)」という言葉に出会って、なんとなくスルーした方も多いのではないでしょうか。
業界ではかなり当たり前のように使われている用語なので、いったん噛み砕いてみます。
ひとことで言うと
RAG(ラグ)とは、「AIに自社の資料を渡しながら答えさせる」仕組みのことです。英語の「Retrieval-Augmented Generation」の頭文字で、日本語にすると「検索で補強しながら文章を作る」というような意味になります。
普通のAIチャットは「自分が事前に勉強したこと」だけで答えますが、RAGは「目の前にある資料も読んだ上で」答えてくれる、というところが違いです。
たとえ話で説明
図書館の司書さんを想像してみてください。
本をたくさん読んでいる司書さんに「うちの会社の去年の年末セールの売上、わかりますか?」と聞いたら、当然「いえ、それは存じあげません」と返ってきますよね。司書さんがいくら博識でも、あなたの会社の中の資料は読んでいないので、答えようがありません。
では、その司書さんの机に、あなたが会社の売上資料を1冊置いてあげるとどうでしょう。資料を開いて該当ページを探して「2025年12月の売上はこちらに書かれていますね」と教えてくれるはずです。
RAGは、これとほぼ同じ仕組みです。AIに対して、質問のたびに「この資料を読んでから答えてね」と、関係しそうな書類を一緒に渡すのがRAGの正体です。AIの中身を作り変えているわけではなく、その都度「読ませる」だけ、というところがポイントです。
※厳密には、AIに渡す前に「質問と関係しそうな箇所」を社内資料から検索して取り出す、という処理が裏で動いています。司書さんの机に資料の山ごと積むのではなく、関係ありそうなページだけ抜き出して渡すイメージです。
ビジネスで何が変わるか
RAGの仕組みを知っておくと、AIまわりの発注検討の場面で次のような判断がしやすくなります。
- 「自社の情報を答えさせたい」場合の標準的な選択肢であることがわかる。サポートチャット、社内ナレッジ検索、製品情報の案内など、多くの案件でRAGが選ばれている
- AI本体を作り変えるわけではないので、追加で学ばせる方式(ファインチューニング)に比べてコストが軽く、情報の更新も早い。マニュアルが変わったらその場で資料を差し替えるだけで反映できる
- その代わり、「読ませる資料」の整備が品質を左右する。古いFAQ、書き散らした社内ドキュメントを渡すと、それっぽい古い回答が返ってくる
発注検討の場面で「これってRAGですか?それともAIを追加で学ばせるんですか?」と聞けると、提案内容を立体的に理解しやすくなります。
関連用語
- ファインチューニング:AI本体に自社データを覚え込ませる方式。RAGより手間とお金がかかるが、特定の文体や専門領域の対応に強い
- ハルシネーション:AIがそれっぽい嘘をつく現象。RAGは正しい資料を渡すことでハルシネーションを抑えるのに役立つ
- OCR:紙の資料をRAGに渡せる形にするときによく組み合わせる技術。スキャンしたPDFや書類をAIが読める文章に変える